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再エネ補助金で、日本の森がダメになる

「高い価格で取引されてもおかしくない木が、バイオマス発電用に叩き売られている。このままでは日本の森林が危ない」と、慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科の白井裕子准教授は言う。

丸太は品質によって、A、B、C、D材に分けられる。A材は製材用に、B材は集成材やCLT等の合板用に、C材はチップ用になり、D材は林地残材(そのまま山に置いてくる)、というのが一般的な用途で、価格は当然A材が一番高く、順に値段が下がる。売れないので山に置いてきた林地残材のD材は、木質バイオマス発電用の燃料として利用できるようになった。


一本の立木からは、右図のようにA材、B材、C材が取れて、それぞれの用途に利用される。価格も用途によって段階的に設定される。資源を無駄なく使うことで資源全体の価値を上げる、捨てるところがないようにする利用方法をカスケード利用と呼ぶ。放置していたD材を発電用燃料に利用すれば、立木をすべて利用することが出来るので、資源を無駄なく活用して林業を潤し、森林資源の保全につながるはずだ。

しかし、今の日本の林業の問題は、A材が売れないことにあると言われている。増えているのはB材以下の需要ばかり。実はA材の製材を得意とする各地の中小製材所が、国の政策による大規模化・集約化のあおりをうけて、激減している。B材を使う合板類は大型工場の方が有利なので、大規模集約化に伴って、B材の需要は増えて、本来はA材で売れる丸太までB材として売られる状況が起きている。

さらには、用材になるはずの丸太が、バイオマス発電所の燃料需要増加によって、B材、C材までもが燃料用D材の値段で取引されるようになっている。 バイオマス発電用燃料は、本来はこれまで売れなかった木の残り、林地残材のD材を利用することに意味があるのに、高く売るべき丸太まで消費し始めている。その結果、丸太全体の価格が下がった地域もある。カスケード利用では、A、B、C、D材それぞれを適した用途に販売することで全体の収益を上げることが出来る。それによって、再造林や植林に手間と費用をかけることが出来るので、山林資源を保全して次の世代につなげることが可能になる。

バイオマス発電燃料用に、B材、C材を使い始め、場所によってはA材までも使っている。建築用材を粉々にして叩き売れば、一時的に目先の現金は稼げるが、中長期には林業家は疲弊し、山林も荒れてくるので、将来への持続性は得られない。本来は高く売れる用材を、なぜ安い燃料用に回すのか、と思われるだろうが、そこには、伐採に対する補助金が下りることと、電力用燃料は売値がFIT(固定買取価格制度)で保護されているので売価が確実であることがある。国の補助金は、大規模伐採、いわゆる皆伐の方が多額の収入になるので、とにかく沢山切って、発電所に持ち込めばいい、という図式になっている。

皆伐による森林破壊が、本来は森林が保持している山林の保水力を弱めてしまい、昨今の豪雨などによる土砂崩れの遠因になっていることが指摘されている。森林資源の保護、山林保全と再生可能エネルギーのためのバイオマス発電の共生は可能なのだろうか、と疑問に思う方も多いと思う。

実は、その解決策が「小型木質バイオマス発電」になる。近隣地域で算出される木材資源量に合わせた規模、それもC材・D材の産出量で採算規模になる小型発電は、ガス化発電でしか実現できない。山間地・内陸に設置可能なプラント規模なので、輸送コストも大幅に削減できて、チップ加工費も不要になるので、林業家の手取り収入は増加する。それによって植林・再造林も確実に実施して、数十年サイクルの長期的持続可能な林業となる。

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